米国主導の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が大筋合意したことで、中国では独自の経済圏として「一帯一路」の建設を加速すべきだという論調が強まっている。「一帯」とは欧州まで陸路でつながる「シルクロード経済帯」。「一路」とは海路の「21世紀海上シルクロード」を指す。
東南アジアから欧州まで65カ国を巻き込む壮大な構想だ。域内の新興国には鉄道などインフラの建設というメリットを与え、中国は政治的影響力と関連ビジネスを得るというウィンウィンの構図が強調されている。中国が年内に設立するアジアインフラ投資銀行(AIIB)など、この構想を支えるための機関づくりも着々と進んでいる。
一方で、中国国内では一帯一路の推進に不安を覚える向きも少なくない。
例えば政府系シンクタンクである中国社会科学院世界経済政治研究所の張明氏は、インフラ投資の収益率は低いこと、対象国のカントリーリスクが大きいこと、周辺国の中国への警戒感を高めかねないこと、などの問題点を指摘。「一帯一路の潜在的なチャンスが大きいことは否定できないが、潜在的リスクも軽視できない」と警告している。
こうした議論のなかで異彩を放っているのが、中国政府系銀行である国家開発銀行の研究員を務める劉衛平氏の見方だ。
彼は共産党エリートの養成校である中央党校の内部刊行物に寄せた「“一帯一路”戦略のために海外での調査研究工作が急務」という文章で、「中国はアフリカに巨額の投資をしているが、中国人はどれだけアフリカを理解し、その政治、経済、社会を実地で研究しているか」と問い掛ける。
さらに「歴史上、大国が台頭するときには知識の蓄積のために巨費を投じてきた」と指摘、その実例として日本による「満鉄調査部」創設を挙げる。