■新興国のインフラ受注に道
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)では域内の企業が国境をまたいだビジネスを展開しやすくするため、進出を妨げる垣根が取り払われる。なかでも米国が新興国側に強く迫ったのが国有企業改革だ。協定では参加国政府が国有企業に有利な条件で貸し付けるなどの援助により他国の利益に悪影響を及ぼしてはならないと規定。外国企業が国有企業と対等な競争条件で事業を行える基盤を確保した。
アジア新興国などでは特にインフラ事業で国有企業の存在感が強い。マレーシアでは資源開発、電力、通信の3社を中心に国有企業が国内総生産(GDP)の3割超を占める。国有企業が政府から資金面などで優遇を受ければ、進出した外国企業に対し圧倒的な優位に立つ。そこで、経済合理性を度外視した援助で競争環境がゆがまないよう、政府が「他の参加国の企業に対し無差別の待遇を与える」といった規定を設けた。
外国企業に門戸が閉ざされていた政府機関による公共事業や資材発注についても一定額以上は入札を開放する。TPPによって日本企業はマレーシアやベトナム、ブルネイで初めて公共事業の入札で参加機会を得るため新興国で急速に伸びるインフラ需要の獲得に追い風となる。