追加緩和のタイミング探る 物価目標になお強気 日銀総裁

2015.10.31 14:51

 「必要であれば躊(ちゅう)躇(ちょ)なく追加金融緩和であれ、なんであれ調整を行う。その手段に限界があるとはまったく思っていない」

 日銀の黒田東(はる)彦(ひこ)総裁は30日の金融政策決定会合後の記者会見で、物価上昇率2%の達成に向けた決意を改めて強調した。2%の達成時期を半年程度先送りした一方で、いつでも追加緩和のカードを切る可能性をちらつかせた。

 総務省がこの日発表した9月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は長引く原油安で前年同月比0・1%下落し、2カ月連続のマイナス。日銀の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」でも平成28年度の物価上昇率予想を1・4%まで大幅に下方修正し、2%にはほど遠くなった。

 それにもかかわらず、日銀が今回、追加緩和のカードを温存したのは、「物価の基調は着実に改善してきている」(黒田総裁)と判断したためだ。日銀の試算によると、生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価の上昇率は今年1月と2月の0・4%を底に上昇を続け、9月は1・2%まで高まった。

 食料品や日用品の店頭販売価格の動きを示す東大日次物価指数は1・65%(28日までの1週間の平均)と今夏以降は上昇が続く。

 円安が原材料の輸入価格を押し上げているためだが、身近な商品の値上がりが急すぎると、家計は財布のひもを固くしてしまう。黒田総裁は「物価だけ上がればよいわけではない」と強調する。

 日銀はさらなる賃上げに期待を寄せるが、中国などの新興国経済の失速を背景に、企業は慎重になっている。黒田総裁も企業業績が最高水準にもかかわらず、賃上げの伸びが鈍いと指摘した。

 また、9月の全国企業短期経済観測調査(短観)では強気の設備投資計画が報告されたが、黒田総裁は「計画の割に十分出てきていない」と不満を述べた。

 黒田総裁は会見で、「必要になれば躊躇なく調整を行う」と何度も繰り返し、追加緩和に踏み切る可能性も示唆した。

 ただ、市場関係者からは「国債買い入れ額の拡大余地は乏しくなっている」との指摘も出ている。

 「現時点でも(日銀の保有量は)発行残高の3割弱で、(限界を)考慮するまでにはなっていない」

 黒田総裁はこう反論したが、国債の流通量が細る中、追加緩和の余地がじりじり狭まっている面はありそうだ。(米沢文)

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