5日に公表された環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)文案。米国など5カ国が要請すれば協定発効7年後に関税削減について再協議する規定が盛り込まれたことで、農業者の反発はさらに強まりそうだ。
政府は特定品目の関税だけを取り上げた再協議は行わないと強調するが、協定発効後も関税撤廃の時期などが早められる可能性は否定できない。野党の追求を受けるのは必至で、来年の通常国会での協定承認手続きへの影響も懸念される。
「経済連携協定(EPA)でも(協議の)見直し条項が入るのは普通。今回は攻める分も守る分も見直し条項に入っており、しっかり対応する」。森山裕農林水産相は5日、記者団に対し、協定文案に交渉の再協議が規定されたことについて、前向きに捉えた。
同日政府が公表した協定文案に盛り込まれた再交渉の規定では、日本は米国など農業国の5カ国に対して、要請があれば協定発効7年後に再協議に応じることが明記された。政府は「要請があれば協議はするが、折り合わないことも想定される」として、必ずしも相手国の言い分に応える必要性はないことを説明。「参加国の経済状況などが変化するなかで見直し規定はあるが、特定品目だけを取り上げる再協議は絶対にない」と不安払拭に努めた。
だが、農業者の不満は募るばかりだ。ある農業関係者は「大筋合意後に次々明るみに出る交渉結果に辟易している。TPPによる影響分析も表層的で、政府への不信感が日に日に高まっている」とうなだれる。
農水省が公表した影響分析で、農家への影響が「限定的」だと説明した根拠の一つが長期の関税削減期間だ。国産価格の下落が懸念される牛肉も、16年目までに関税を削減する。