【迫る市場開放 TPPルポ】北海道、小麦農家「ピンチは好機」 (2/3ページ)

2015.11.21 07:10

国道沿いの小麦畑に立つ岡野貴儀さん=4日、北海道当別町

国道沿いの小麦畑に立つ岡野貴儀さん=4日、北海道当別町【拡大】

 小麦農家の経営を支える国の交付金は数量払いのため、収穫が多いほど実入りも増える。そんな祝賀ムードを一変させたのがTPPの大筋合意だ。「経営が苦しくなりそう。いつまで小麦を作っていけるか、危機感でいっぱい」と肩を落とす。

 小麦の関税に相当する「輸入差益」が削減されると、小麦の価格が下がるだけでなく、輸入差益を財源としてきた交付金が削減されるとの懸念が背景にある。

 「そもそも小麦は非常に安い作物。交付金なしでは経営は成り立たない」。政府や経済界は農産物の輸出拡大を呼び掛けるが、米国やカナダが圧倒的な生産量を誇る小麦を日本が輸出する余地はないに等しい。

 「父はもともとコメ農家だったが、国の減反政策に従って小麦に転作した」。コメと小麦は同じ農機具を使うため転作しやすく、多くの小麦農家が以前はコメを作っていた。「国を信じて小麦を作ってきたのに、これからどうなるのか」

 ほとんどの農家がTPPに反対する中で、輸入品との競争を恐れないのが栗山町の勝部征矢さん(77)だ。「TPPに関係なく、農業だけ鎖国を続けることはできない」と言い切る。

 ◆農協通さず直接出荷

 勝部さんは約170ヘクタールの畑で小麦だけを生産する。農林水産省によると、家族経営の小麦農家としては国内でも異例の規模という。

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