ロンドンの日本大使館で開かれた高知県産の日本酒の試飲会=9月(同大使館提供)【拡大】
「獺祭」で知られる旭酒造(山口県岩国市)も海外売上高の約55%をアジアが占めており、TPPをまさに好機と捉えている。
清酒大手の黄桜(京都市)は約15年前から輸出に取り組む。米国や韓国、オーストラリアなどを中心に取引先は約30カ国に拡大した。ただほとんどは和食料理店など飲食店向けで、現地の小売店での販売は限られている。海外営業の担当者は「近年の『和食ブーム』が続くうちに発効を」とTPPの効果に期待を寄せる。
酒造業界の全国組織、日本酒造組合中央会(東京)の海外戦略委員会の増田徳兵衛委員長(60)は「世界的に広がるワインと肩を並べたい」と意気込む。ただ課題は価格だ。輸出は「大吟醸」など高級品が中心で、日本国内の数倍の価格で取引され、日常的には消費されていない。TPP発効で一定の値下げが期待できるが、効果は未知数だ。
中央会は京大などと連携し、質を落とさずに「大吟醸」などの生産量を増やし費用を下げる技術を研究中だ。日本酒を着物や酒器といった伝統産業品と組み合わせて売り込み、認知度向上を目指す試みも考えている。