【迫る市場開放 TPPルポ】酪農 攻めの姿勢で生き残り模索 (1/2ページ)

2015.11.25 05:00

搾乳作業を行う松井直弘社長=7日、群馬県太田市の松井牧場

搾乳作業を行う松井直弘社長=7日、群馬県太田市の松井牧場【拡大】

  • 松井牧場の生乳で作られたチーズ(同牧場提供)

 ■重労働・高齢化に追い打ち

 ふんの臭いが広がる牛舎。整列した乳牛。搾乳機を手際よく取り付けていく従業員。搾り取られた生乳が管を勢いよく走り抜けていく-。群馬県太田市の松井牧場は朝と夕方の1日2回、搾乳作業に追われる。乳牛約90頭。たった6人で切り盛りしている。「休みはあんまりないね」と松井直弘社長(52)。酪農は重労働の農業の中でも、とりわけ負担が重い。牛がつくる乳を毎日搾らなければならないためだ。

 日本の酪農をめぐる状況は厳しい。高齢化による離農に加え、きつくて衛生的とは言い難い家畜の世話を敬遠する若者が多い。

 農林水産省によれば、乳牛を飼育する農家戸数は1975年の約16万戸から、2015年には約1万8000戸と9割近くも減少した。

 追い打ちをかけるように、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)では、バターと脱脂粉乳に特別輸入枠を設定し、チェダーやゴーダといったチーズでは関税が撤廃される。ニュージーランドのように競争力のある参加国からの輸入が増えるとみられている。

 農水省はTPPにより、長期的に国内産チーズなどの価格下落が生じる可能性があると分析する。国内の酪農家や農業団体からは「将来に対する大きな不安を抱えている」として、支援策を求める声が相次いで上がっている。

 「文句を言っても仕方がない」。松井社長は、将来を見据え競争力の強化を考えている。

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