■高付加価値で安い中国製に対抗
輸出用洋食器の製造で「世界の陶磁器工場」と呼ばれた岐阜県瑞浪市。陶磁器は中国の安い製品に圧倒され、輸出量が激減している。海外の食卓に目を向け輸出回復に取り組むメーカーは、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の大筋合意による関税撤廃を好機と捉える。
「価格や質の高い商品を提案しやすくなる」。日本の代表的な陶磁器「美濃焼」のメーカー、深山の商品戦略室室長、柴田正太郎さん(42)は、将来の関税撤廃に期待を示した。
瑞浪市がある岐阜県南東部は美濃焼の産地として知られる。深山は、遠くに山々が見える市内の静かな一画に本社工場を構えている。
ベテランから新人まで約20人の従業員がそれぞれの工程に黙々と向き合う。製品は皿やポットなど約700種類。手作業が多く、コストは掛かるが、品質に対する取引先の評価は高い。
ガラス質のうわぐすりを製品に塗る「施釉(せゆう)工程」は焼き上がり後の美しさを決める。担当の一人、色原昌希さん(27)は4月に入社したばかりだ。「難しい形の製品はすぐにはうまくできない。先輩の手の角度を後で思い出すこともある」と試行錯誤を繰り返す。