ロシア帝国復興をもくろむプーチン政権に対し、ワシントンはレーガン時代の戦略を参考にしているかのようだ。FRB首脳陣は、2015年12月中旬に景気への衝撃を憂慮する内外の根強い慎重論を押し切って利上げに踏み切ったが、今年も段階的に追加利上げする姿勢だ。利上げの数日後には米議会が米国産石油輸出解禁に踏み切り、石油市場急落に弾みをつけた。
ワシントンに振り回されるプーチン政権としては、エネルギー市場の支配権を確保したい。14年3月のクリミア編入、15年9月のシリアへの軍事介入には石油や天然ガスのパイプライン戦略がからんでいる。ロシア産天然ガスの大半は親米のウクライナを経由して欧州に供給されている。パイプライン・ルートのクリミア半島はロシアにとって地政学的要衝である。
シリアはイラクやイランなど中東の欧州向け石油パイプライン計画の中心である。シリア政権が親米欧派に代わってパイプライン計画を実現すれば、欧州はロシアへのエネルギー依存度を大きく下げられる。ロシアが反米のアサド政権を見放すはずがない。