首相はそもそも軽減税率を問題視し、その導入時期を17年4月と明言しなかった税制に精通したベテランの野田毅氏から、あまり経験のない宮沢洋一氏に、党税調会長を変えた。軽減税率の創設のような重大な税制上の問題は付加価値税の先発国の経験を参考に、租税理論に立脚し慎重に審議し決定すべきものであった。
第2に、軽減幅は10%の標準税率からがわずか2%にすぎない。欧州連合(EU)諸国(28カ国)の現状をみると、標準税率の平均21.6%に対し食料品に対する適用税率の平均は11.1%にすぎない。付加価値税が長年定着した欧州諸国を見る限り、一般に両税率の格差は10%程度に及ぶ。この程度の幅があるからこそ、税負担感の調整に役立つのだ。
日本でも将来、標準税率がせめて15%に達したときに、軽減税率を導入すべきであった。今回の措置は時期尚早といえよう。
◆財源をめぐる問題
第3に、軽減税率は低所得者対策として導入したと説明されるが、真に有効なのであろうか。当然、高所得者も軽減税率の恩恵にあずかれる。食料品の消費もより多額になることから減税額は、高所得者の方が多いはずである。少なくとも低所得者対策として旗印にするなら、もう一つ代替案として有力視される給付付き税額控除との比較検討を行うべきであった。このような試みを一切行っていないことに不満が残る。