米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げのサイクルに入ったのに、米長期金利が低水準で推移しているのはなぜか-。世界経済が加速せず「低体温症」に陥っていて、安全で比較的高い利回りを維持している米長期国債に資金が流入しているためだ。
昨年12月にゼロ金利を解除し、利上げのプロセスに入ったFRBだが、長期金利の動向が過去の利上げプロセスと異なっている。今年1月下旬から2%を明確に下回り出し、今月11日に一時、1.5%台に下がってしまった。
その原因をたどっていくと、「中国経済の先行き不安」「原油価格下落」「地政学的リスク」「欧州銀行株の急落」「米景気後退リスク」など複数のテーマが出てくる。
そして、不透明な中ではっきりしてきたことがある。2016年の世界経済は「減速感が強まる」ということだ。
経済協力開発機構(OECD)は18日、16年の世界成長見通しを3.3%から3.0%に引き下げ、17年も3.6%から3.3%に修正した。
世界経済の減速感が強まれば、ビジネスの収益率も低下する。それを先取りするように今年1月から世界的に株式市場が下落局面となり、米、独、日などの国債が買われた。
ある国内銀行関係者は「主要国の運用者からみると、安全で流動性があり、相対的に高い利回りを維持している10年米国債は、“最後の楽園”的存在」と話す。
このことは世界中を見回しても、高い収益を確保できるビジネスが急速に姿を消しているということを意味している。
私は、現在起きていることを「世界経済の低体温症」と呼んでみたい。利上げ局面における米長期金利の異例な低水準は、世界経済の活力低下の象徴と言えるのではないか。