株価はマイナス金利の副作用が銀行経営に最も強く表れるのではと警戒している。主力の融資業務は預金と貸し出しの利ざや縮小で収益が圧迫されるだろう。定期預金と普通預金の金利差がなくなったため、今後、定期性預金から普通預金へのシフトが進みそうだ。期間のミスマッチが生じ、銀行の負債サイドの流動性リスクが高まることもあり得る。日銀のもくろみに反し、貸し出しに縮小の圧力がかかりかねない。信用創造・金融仲介機能の低下である。ゆうちょ銀行の収益の柱は国債の運用だ。運用資金約200兆円の約4割を国債で運用している。長期国債利回りが長くマイナスに沈めば、運用利回りはさらに下がる。焦って株式、不動産ファンドなどの運用に走ればリスクが大きくなるばかりだ。主要国の中央銀行で構成する国際決済銀行も最近公表した四半期報告書の中でマイナス金利の政策効果に疑問を呈した。
青臭い書生論にご容赦を。「われわれの時代には利潤率が利子率を規制する。かの時代は利子率が利潤率を規制した」。興が湧いて厚い埃(ほこり)をかぶったマルクスの『資本論』(向坂逸郎訳、岩波書店)を引っ張り出し、飛ばし読みしたらこんな一節を見つけた。利潤率は潜在・期待成長率と読み替えるのも可能だ。潜在・期待成長率の著しい低下がマイナス金利につながったのだろう。利子率がマイナスになったからといって潜在・期待成長率が高まる保証はない。
マイナス金利で利子は消滅、資本の自己増殖は停止した。資本がリターンを生まない世の中にはマルクスも“びっくりポン”だろう。マイナス金利で資本主義は海図なき航海にこぎ出した。銀行株の急落、低迷は株式市場にとどまらず資本主義の変節、危機を物語っているように思えてならない。