集団移転の一戸建て住宅が並ぶ宮城県岩沼市の玉浦西地区=2月【拡大】
東日本大震災で住宅が被災した世帯の再建状況を示す指標で、岩手、宮城、福島3県の沿岸市町村間で2倍超の格差があることが共同通信の集計で分かった。用地不足から宅地の整備が遅れていることが背景。東日本大震災の発生から11日で5年となる。住まいの再建の足踏みが続けば人口流出に拍車が掛かる懸念もあり、住民は危機感を募らせている。
指標は、住宅被害に対する生活再建支援金を申請・受給した約16万8000世帯のうち、自力で家を再建するめどを立てて「加算支援金」を申請・受給したり、災害公営住宅に入居したりして住まいを得た割合。沿岸部や、原発事故の避難区域になった3県の42市町村を対象に、1月末時点の「再建率」として算出した。
集計によると、岩手県山田町が41%、宮城県女川町が43%にとどまった。平地が少なく、高台の造成工事などで宅地確保を進めるが、時間がかかっている。
一方、宮城県亘理町は89%、同県岩沼市は83%と、被災程度が大きかった自治体の間でも2倍以上の差がついた。福島県では広野町が38%、楢葉町が46%と低く、東京電力福島第1原発事故の影響が残る中で、避難した住民が再建方法を迷っているとみられる。
2015年国勢調査(速報値)で、震災前から人口が37%減った女川町の担当者は「加算支援金を受け取って町外に家を建てた世帯もおり、女川町としての再建率はもっと低いだろう」と指摘。同町の仮設住宅に住む遠藤進さん(76)は「残った人は高齢者が多い。数年後にはさらに町の規模が小さくなるのでは」と不安そうに話した。