ただでさえ、中国のGDP統計は経済実態を反映していないとされる。それをもとに倍増計画を掲げたところで、内実が伴わなければ、減速する中国経済に対する世界の不安は払拭されまい。
高度成長期に先進国の仲間入りを果たした日本とは異なり、今の中国が警戒しているのは、途上国から高所得の先進国へと発展段階が進む前に成長が足踏みする「中所得国の罠(わな)」に陥ることである。
これは、世界銀行が07年に指摘した傾向で、多くの途上国にみられる。人件費上昇や技術進歩の停滞、産業高度化の遅れなどが原因とされ、「罠」にはまらなかったのは、日本など一部の国だけだ。
経済規模が世界2位まで巨大化した中国も、1人当たりGDPでみると、いまだ1万ドル(約114万円)に及ばない。「罠」への危機感は強く、李首相が全国人民代表大会で「中所得国の罠を克服する重要な5年間だ」と述べたのも、その表れといえよう。
■
では、中国は「罠」を回避できるのだろうか。楼継偉財政相は1年前、「構造改革を断行しなければ、5~10年の間に罠に陥る危険性が50%ある」と語った。
中国共産党機関紙、人民日報の情報サイト「人民網」(日本語版)は、もう少し詳しい分析記事を掲載した。
具体的には、成長率7%の高成長なら20年までの5カ年計画中に回避できる。5.5%の中成長なら22年、4%の低成長の場合は次の5カ年計画(21~25年)が終わるころまでかかると指摘した。
経済が減速しても失速せず、中成長以上を維持して高成長を目指すことが、罠を回避する基本戦略だという指摘である。