【新興国に翔ける】シャープにみるモノづくりの落とし穴 (1/2ページ)

2016.4.12 05:00

 □スパイダー・イニシアティブ代表 森辺一樹

 技術力が高い、品質がいいというだけではモノが売れない時代。そのいい例が、記憶に新しい鴻海(ホンハイ)によるシャープの買収だ。このニュースが報じられた当初、鴻海という企業に対する認知度が低かった日本では、「あの大企業のシャープが台湾の企業に買収されるなんて」と全国に衝撃が走った。

 今から10年前は、鴻海に比べて圧倒的に優勢だったシャープ。それが今や、鴻海の2015年12月期の売り上げは約15兆円で、シャープの5倍もの規模を誇る。なぜ、このような事態に陥ったのか。

 「亀山モデル」に代表される液晶技術で一世を風靡(ふうび)したシャープは、モノづくりにこだわり、工場に大規模な投資を行った。しかし、テレビが売れない時代に突入。加えて、主力商品のスマートフォン液晶も、大口顧客である米アップルの売り上げに大きく左右される。わかっちゃいるけど抜け出せない。結果、経営難の憂き目に遭った。

 原因は2つある。まず1つ目は、かつて欧米から家電製品トップの座を奪った日本勢にテレビ生産でかなう企業はなかったが、今では韓国や中国、台湾の企業でも生産できるようになった。つまり、テレビはどの企業が製造しても品質に差がつきにくい「コモディティ化」をしたということだ。ラジオしかなかった時代にテレビが登場した当時は、世界中の誰もが驚くイノベーション(技術革新)だった。白黒がカラーになった、ブラウン管が液晶になった-。これらも大きなイノベーションだったといえるだろう。

 しかし、その後の画面がきれいになった、性能が高くなった、大きくなった…というのは、とてもイノベーションとは呼べない。フルハイビジョン画面よりも画質が4倍も美しい4K画面になるというのは、素晴らしい技術進歩だが、新興国を含め、世界がそれほど求めているとは思えない。

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