元来、株式投資における銘柄選択は、1銘柄ずつ財務諸表をにらんで精査することによって、割安や、今後成長しそうな銘柄の発掘が行われてきた。しかしコンピューターの発達によって、財務諸表や株価のデータベースが作成され、大量の銘柄群に対して簡単にスクリーニングが実行できるようになると新しい手法が加わった。アカデミックな世界でも、投資工学が発展し、株価純資産倍率や配当利回りのような指標一つ一つをファクター(要素)と呼んで、過去に遡(さかのぼ)って、それぞれの投資成果に対する効果を測定できるようになった。
そうした研究成果の一つとして、ノーベル賞を受賞したユージン・ファーマ氏らによって長期で安定して収益を稼げるファクターとして発見されたのが「バリュー効果」だった。
しかし発見された後に分かった事は、こうした傾向にも無視できない波があるということである。グラフは2000年のITバブル以降のスタンダード・アンド・プアーズのバリュー株指数をグロース株指数で割った倍率を示している。ITバブル崩壊によってハイテク株が売られたことによって当初はバリュー株が強かったが、リーマン・ショック以降は、一貫してグロース株が強かったことが分かるだろう。ここへきて、その傾向に少し変調が見られるというのが米国市場でバリュー株の復活が話題となった理由である。ちなみにバリュー株の構成銘柄は、規制強化と金利低下に苦しんできた銀行株と、原油価格の低下に苦しんできたエネルギー株が主体である。仮に市場が期待するようにバリュー株の復活があるとすれば、大きな経済上のトレンドの転換を意味することになるだろう。