アベノミクスの失敗は、異次元の量的緩和というリフレ派の金融政策に疑いもなく便乗したことにある。異次元緩和の根幹をなし、年間60兆~70兆円の増加を見込んだマネタリーベースは(1)日銀券発行額(2)貨幣流通量(3)市中銀行の日銀当座預金-の3つによって構成される。異次元緩和前の2013年3月と直近の16年4月のそれぞれの数字を比較すると、(1)の日銀券発行額は82.8兆円から95.6兆円(+15%)、(2)の貨幣流通量は4.5兆円から4.7兆円(+4%)となった。市中に流通する通貨の量は、(1)と(2)の合計なので、通貨供給量は大幅に増えたわけではない。最後の(3)日銀当座預金残高だけは、47.3兆円が280.5兆円へと5.9倍も増えた。要するに、異次元緩和を行っても、市中銀行の日銀当座預金の額面を増やしただけで、生産や雇用、賃金の原資に回ったわけではないのだ。
日銀は2月から、この日銀当座預金の一部にマイナス金利を設定した。銀行が日銀当座預金を切り崩し、企業の投資などに融資するよう力ずくで求めたものだ。しかし、マイナス金利導入前の今年1月と4月の日銀当座預金残高を比較すると、プラス25兆円となり、残高は減るどころか、むしろ増え続けている。
当然のことながら、いくら銀行が融資に使えるお金を増やしたところで、企業に資金需要が発生しなければ、お金は使われることがなく、生産の拡大を通じた物価上昇もあり得ない。長期におよぶ深刻なデフレ経済からの脱却に必要だったのは、金融・通貨依存政策ではなく、需要の掘り起こしにあったのだと考える。