その当事者の日銀内部からマイナス金利政策に反対する狼煙(のろし)が上がった。日銀の佐藤健裕審議委員は2日に釧路で開かれた金融経済懇談会で講演し、マイナス金利政策について「理論矛盾であり、持続性に欠ける」と述べたのだ。マイナス金利という一種のペナルティーを科しつつマネタリーベースの増加目標を維持する政策は、理論的に矛盾する政策というわけだ。
佐藤委員は、マイナス金利の導入に伴い利回り曲線が極端に平坦(へいたん)化し、長期ゾーンまで利回りがマイナス化することで金融機関は「限界的な資産の逆ざやリスクに直面している」と指摘した上で、「(金融機関に)潜在的な信用コストの高い貸出先への融資抑制や資金アクセスの乏しい企業への貸出金利引き上げなどの動きが広がる可能性がある」との見方を示した。マイナス金利政策の目標に反して、金融機関はバランスシートの圧縮に向かいかねないという指摘だ。
また、佐藤委員は、マイナス金利により短期金融市場の機能が低下しており、「2003年の『VaRショック』前のような危うさを感じる」とも述べている。ここで言う「VaRショック」とは、長期金利が史上最低の0.430%まで低下した後、2%近くまで急上昇した歴史的な債券暴落を指している。
住友銀行を経て、モルガン・スタンレーMUFG証券のエコノミストとして長年、債券調査に当たった佐藤氏は、金融の現場を熟知している。審議委員の一人としてあえて指摘しておかなければならないとの決意が感じられる。