とはいえ、政権基盤が弱体化している朴(パク)槿恵(クネ)政権が韓国政府の政策に「拒否権を持つ」(元韓国外務省幹部)とまでいわれた圧力団体、挺対協をそう簡単に説得できるとは、日本側もはなから思ってはいまい。
本当に慰安婦像の撤去・移転が実現すれば歓迎するが、現状の韓国政府の不作為にしても、日本側にとっては当初から半ば織り込み済みのことだろう。それならばこっちは素早く10億円を拠出してしまい、あとは韓国側の合意不履行を責めて、道徳的優位に立った外交を行えばよかろう。
日韓合意があるにもかかわらず、公館の威厳の侵害を禁止した国際法(ウィーン条約)に抵触する慰安婦像を放置し続ける韓国のありようを、国際会議などの場で取り上げるのもいい。
特定非営利活動法人「言論NPO」などの発表によると、日韓合意を「評価する」人は日本では47.9%なのに対し、韓国では28.1%にとどまっている。韓国側がより多く不満に感じてることが、この合意の持つ意味を表していよう。
(論説委員兼政治部編集委員)