
アトランタ五輪女子5000メートル優勝し、金メダルを獲得した王軍霞(中国)=1996年7月、五輪スタジアム(AP=共同)【拡大】
最初は馬軍団をもてはやしていた世間も、王さんの記録がドーピングの“産物”と白い目を向けるようになった。世界記録が破られたことは、王さんの記録が人間離れしたものではなかったことを意味する。
「記録を突破してくれて感謝している。20数年前、私が成し遂げたことは神話なんかじゃなかった。私に速く走る能力があったことを証明してくれた。20年以上、記録を破ってくれる選手を探していた」と語った王さんは同時に、低迷が続く中国陸上界への不満を隠さない。
「長い間、人々が私をねたましく思って嫌い、罵ってきたことを見れば、難しい。われわれの民族は自信を失い、自分を信じていない。われわれは23年前に記録を作ったのに、信じないし、研究しないし、開発も利用もしない」
昨年、王さんらが現役時代、馬軍団の組織的ドーピングを告白した手紙の存在が明るみに出た。王さんらは、スポーツを国威発揚に利用しようとする国家の愚行によって、自らの才能や努力までも否定された被害者だった。