
アフリカ開発会議で演説する安倍首相=28日、ナイロビ(共同)【拡大】
安倍晋三首相がケニアで開かれたアフリカ開発会議(TICAD)で新たな外交戦略を打ち出した。豊富な資源と有望な市場を抱えるアフリカを重視する方針を鮮明にする構想だ。照準を合わせるのは、国連安全保障理事会の常任理事国入りに向けた支持と、貿易・投資の拡大。しかし、先行する中国が行く手に立ちふさがり、「成長大陸」でせめぎ合いが激しさを増す。
「国際社会に自分たちの主張をより反映するように求める当然の権利が皆さまにはあります。国連安保理改革こそ、日本とアフリカ共通の目標です」
安倍首相は27日、アフリカ各国首脳らを前にした基調演説で安保理改革への協力を呼び掛けた。国連加盟193カ国のうち、アフリカは約3割の54カ国を占める一大勢力だ。日本政府高官は「常任理事国入りにはアフリカとの連携強化が欠かせない」と強調する。
新戦略は、成長するアジアの「成功体験」を、インフラ整備や人材育成への支援を通じてアフリカへと広げ、地域全体の安定と繁栄につなげる内容だ。演説では「自由と法の支配、市場経済を重んじる」「(インド洋を)平和なルールの支配する海とする」などと中国を牽制(けんせい)する文言をちりばめた。
背景がある。日本政府筋によると、TICADで採択を目指す「ナイロビ宣言」の事前交渉で、安保理改革への言及をめぐって一部の国が異論を唱え、調整が難航した。日本側は「中国の息のかかった国が抵抗した」と憤りを隠さない。
常任理事国として最終決定権を持つ中国に対抗するため、日本としてはアフリカ各国を含めた圧倒的な支持を安保理改革実現の追い風としたいが、思惑通りには進んでいない。