また水道管の耐震化も遅れており、これらから更新費用は、2050年までに59兆円だという。高速道路、学校、公営住宅、下水道、トンネルなどほとんどのインフラが、これらの場合と同様である。
さて金融庁は地方銀行を対象に、地元の融資先などを数値化する新指標を導入する。数値化される項目は、地元の融資先企業に対する経営改善の取り組みや、担保に依存しない融資実績など55項目に上る見通しだが、アベノミクスの地方創生に合わせた政策であろう。けれども、むしろ大手行にこそ、このインフラ問題から考慮すべき指標を導入することが肝要である。
例えばこのインフラの危機から抜け出すために、国内のインフラ事業に使途を限定したインフラ債券の発行や、新たな財政投融資の仕組みも必要だ。もっとも、かつてのこの仕組みに関しては、問題点も散見されたゆえ、そのマイナスを克服する工夫も不可欠だが、今やインフラ再建のための財政投融資が不可欠である。
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【プロフィル】田村正勝
たむら・まさかつ 早大大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。同大教授を経て現職。一般社団法人「日本経済協会」理事長。71歳。