□コロンビア大教授・伊藤隆敏さん(65)
--年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用割合見直しに対する評価は
「昨年度の運用実績は赤字だったが、それほど心配することはないと思う。国債の運用割合を67%から60%に変えた2013年度は約10兆円、国債をさらに35%に下げて株式の割合を約2倍の50%に上げた14年度は約15兆円の黒字だった。見直しの目的は毎年利益を出すためではなく、10年間でならしてみて最適なリターンとボラティリティー(価格変動リスク)の組み合わせにすることだ。従来の国債比率60%は明らかに高すぎた。長期金利が低下して金利収入は減少し、将来の金利上昇局面で巨額の評価損を招くリスクが高いからだ。国債比率を35%に下げたのは日本的な感覚では思い切った改革と思われるが、諸外国の公的年金の運用と比べるとまだ債券が多く、思い切りが足りないとも言えるかもしれない」
--世界経済が減速する中、運用で損失がさらに拡大する懸念は
「10年単位でみて株価が下がり続ける可能性は非常に少ないし、長期的には債券より株式の方がリターンが高い。日本の株価が上がらないと信じている人には危険な運用割合になるが、それなら外国の株式の割合を高めることもあり得るのではないか」