韓国はこの数年間、ドルを通じてウォンを人民元と連動させている。通貨の面でも対中従属しているわけだ。その中国とは通貨スワップ協定を結んでいるが、いざというときに北京を頼ったところで、資本逃避と暴落不安のある人民元の供給をあてにできるかどうか、不安が残るはずだ。そんなウォンの危機阻止のために、日本が円を提供するのは、百歩譲っても世論が納得できるはずはない。
政治的には前述したように、日韓とも米国の新政権と組んで、北京に対峙(たいじ)することが最優先される。日韓スワップはその枠組みの中でも位置付けるべきだ。
以上のような戦略思考は安易な「金融協調」しか考えない財務官僚には無理かもしれない。安倍晋三首相と麻生太郎財務相はしっかりと官僚レベルの協議プロセスをチェックすべきだ。(産経新聞特別記者 田村秀男)