中国、ラオス、米国と続いた首相の外遊は絶好の機会だった。首相とオバマ大統領が顔をそろえて自由貿易の意義と保護主義の弊害を説き、TPPの戦略的な重要性を訴える。苦境に立つオバマ大統領にとっても、大きな追い風にできたはずだ。
だが、一連の外遊中、日米首脳会談は一度も開かれなかった。これでは、日米の結束どころか、すきま風が吹いている印象である。日米両首脳には、米議会の反対でTPPの発効が危ぶまれていることへの危機感がどれほどあるのだろうか。
首相はバイデン副大統領との会談で「日米主導でTPPの早期発効に向けた機運を高めていきたい」と発言し、双方が努力することで一致した。だが、ほかならぬ日米が、発効への機運を低下させている現状をもっと厳しく受け止めるべきだろう。
首相はクリントン氏とも会談し、早期承認の必要性を訴えた。クリントン氏は慎重な姿勢を崩さなかったというが、次期大統領候補や民主、共和両党の議員に日本の懸念を伝え、大統領選後の大局的な判断を促すことは、もちろん大切である。
そのためにも、今度こそ確実に国会手続きを終えなければならない。政府・与党は10月末までにTPP承認案などの衆院通過を目指している。11月8日の米大統領選を前に審議が停滞するようでは、米議会への働きかけもおぼつかなくなるだろう。
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与野党には臨時国会で、TPPをどう活用し、新たな成長基盤とするのかを前向きに語り合ってほしい。政局の駆け引き材料にして、審議時間を浪費するようなことは厳に慎むべきである。
関税のみならず、貿易や投資などのルールを幅広く規定したTPPは、人口減少で国内市場の縮小に直面する日本が、海外経済の活力を取り込んでいく上で欠かすことのできない成長基盤となり得る。