
所得税の抜本改革をめぐり、菅義偉官房長官(右上)、佐藤慎一財務省事務次官(左)、自民党の宮沢洋一税調会長(左下)ら政府・与党のキーマンの思惑にはすれ違いがみえる【拡大】
5月、財務省の佐藤慎一主税局長(当時)が菅義偉官房長官を訪ね、働き方を問わない夫婦控除の創設を含む改革私案を提示した。その翌月、主税局長から35年ぶりに事務次官に直接昇格した佐藤氏は、低収入の共働きが増える現状に合った所得税の大改革へ執念を燃やしていく。
◆財務省内に意見対立
ただ、夫婦控除の実現には税収の埋め合わせが不可欠だ。働き方改革を超えて所得再分配の持論に傾く佐藤氏に対し、省内では「中所得者まで負担増を求めるのは政治的に難しく大減税になる」と慎重論が台頭。見解が統一されないまま政府税調を9月に始動させた。
「自民党の腹づもりも分からないし、財務省に聞いても詳しい説明がない」。綿密な擦り合わせもなく前のめりに進む改革論議に、公明党幹部は困惑を隠せなかった。支持層に専業主婦が多い公明党には「党員や支持者からのいろいろな声」が既に殺到していた。
来年1月の衆院解散を選択肢に見据える首相官邸は終始慎重だった。菅長官は「見直しは時間がかかる話だ」と周囲に語り、膨らむ期待にブレーキをかけた。官邸が強い権力を握る安倍政権では「長官がノーと言うものはできない」(自民党議員)。財務省は9月下旬、現行制度の拡充に衣替えした配偶者控除の見直し案を打診。関係者が同床異夢で飛びついた夫婦控除の構想は早々に腰砕けとなった。