日銀さくらリポート 消費不振が地方を直撃 爆買い鈍化、百貨店閉鎖…

 日銀は17日、公表した地域経済報告(さくらリポート)で、個人消費の判断を東海と近畿で引き下げ、5地域で「一部に弱めの動きが見られる」とした。地方を中心に個人消費が弱い実態を浮き彫りにした形だ。訪日客の“爆買い”の鈍化に加え、消費者の節約志向は根強く、百貨店業界では店舗再編も進んでいる。

 「円高で訪日客の客単価が下がっている」

 大丸と松坂屋を運営するJ・フロントリテイリングの山本良一社長はこう嘆く。日銀の本支店が実施したヒアリングでも「免税品の売上高が前年から40%以上落ち込んだ」(本店)など、中国人の高額消費は減少したとの声が相次いだ。

 円高に加え、中国政府が4月に海外で購入した高額商品に対する関税率を引き上げたことで、爆買いは沈静化。J・フロントと高島屋は8月中間連結決算で通期業績予想の下方修正に追い込まれた。

 また、日銀大阪支店の宮野谷篤支店長は、近畿の個人消費について「スーパーで購入単価が下落するなど消費者の節約志向が強まっている」と指摘した。関西ではセブン&アイ・ホールディングスが傘下のそごう神戸店(神戸市)など3店舗を、エイチ・ツー・オーリテイリングに譲渡すると発表したばかりだ。

 百貨店業界ではそごう・西武と三越伊勢丹ホールディングスが、そごう柏店(千葉県柏市)や三越千葉店(千葉市)など計7店の閉店を決めた。消費不振は地方の不採算店の存廃にも影響している。

 ただ、さくらリポートでは、外国人の旅行消費額全体は減っていないと指摘。2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、今後も訪日客数自体は増加が続くとの見方が多いと分析した。多様化する外国人消費の取り込みとともに、国内消費の活性化に向けた施策が不可欠だ。(永田岳彦)