旅館業法の抜本改正、旅館業界“懐柔”の思惑も? 「民泊」解禁に猛反発

規制改革推進会議であいさつする山本幸三規制改革担当相(左)。右は大田弘子議長=24日午後、東京都千代田区
規制改革推進会議であいさつする山本幸三規制改革担当相(左)。右は大田弘子議長=24日午後、東京都千代田区【拡大】

 政府の規制改革推進会議が検討を始めた旅館業法の抜本改正は、既存のホテル、旅館業界に、より多様な営業形態を可能にするものだ。政府が来年の新法成立を目指す「民泊」解禁には旅館業界の反発が強く、今秋の臨時国会への法案提出が潰れた経緯がある。会議が旅館業界の競争力強化を認める緩和方針を示したことは、民泊への業界の反発を和らげる“懐柔”の意味合いもありそうだ。

 会議に出席した山本幸三規制改革担当相は「既存の旅館業法規制についても、会議での議論を踏まえ、しっかり取り組んでもらいたい」と述べた。

 見直しが検討されることになった最低客室数の規制の目的は「安定的な経営の確保」、フロントの設置義務は「本人の確認および出入りの確認」だ。

 こうした目的に対し、24日の会合の出席者は「IT時代に本人確認する方法はいくらでもある」と規制の「時代錯誤」を批判した。会議後の会見で、議長の大田弘子・政策研究大学院大学教授が指摘したのは、規制緩和で業界の「創意工夫」が可能になることだ。

 政府が導入を目指す「民泊」は「フロント設置を求めない」などの内容になるとみられ、旅館やホテル業界は「競争が不利になる」と警戒を強めている。

 民泊新法は、今秋の臨時国会でも提出が検討されたが、旧規制改革会議が求めた民泊の年間営業日数「180日以下の範囲内」に旅館業界が反発。空き物件の利用に積極的な不動産業界などとの間で利害対立の調整がつかず、法案提出は見送られた。

 規制改革推進会議が今回緩和方針を示した背景には、こうした事態を避けたい思惑もある。

 政権は観光産業の底上げを成長戦略の柱と位置付け、2020年に訪日客を4000万人まで増やすことを目指している。民泊関連で調整が進まなければ観光戦略が遅れ、日本の成長力が弱まりかねない。(山口暢彦)