今年5月、米大統領選で不動産王のドナルド・トランプ氏が共和党の候補指名を確実にした段階で、中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は社説で、「トランプ氏を『騒ぎを起こすピエロ』と判断すると見誤る」と評している。「トランプ大統領」に冷静に向き合うよう主張し、「実利を重視する大物のビジネスマンだ」とも描いていた。
日常生活から権力掌握や国家運営にいたるまで「損得勘定」が普遍的な行動規範に染みついている中国人にとって、新大統領が「保護貿易主義」をチラつかせようとも、現実主義のビジネスマンの方が理念的な政治家よりもはるかに交渉しやすいと考える。同紙はさらに、「だれが大統領になろうと、最終的に『中国が実力をつける』以外の選択肢はない」とも訴えた。
中国は一党支配による即決即断の政策決定と強烈なパワーで、トランプ政権との対抗軸を構築していくだろう。老獪(ろうかい)なる不動産王との“値段”の駆け引きは中国人にとって最も得意な分野だ。商談に臨む前に、いかに自分を大きく見せるかが不可欠であることもよく知っている。むしろ習近平政権は、トランプ政権との交渉を手ぐすねを引いて待っているように見える。