
シベリア鉄道の東京延伸のイメージ【拡大】
日本側は11月の世耕弘成経済産業相の訪露を経て、優先的に検討する案件を約30事業まで絞り込んだと発表した。だが、結果的には民間だけで68件、政府間を合わせれば80件の事業で覚書が交わされた。投融資額は約3000億円に上る。
政府担当者が民間企業に頼み込んでまとめ上げた“大盤振る舞い”にもかかわらず、お蔵入りになった各案件の難易度は相当に高い。
その代表格が、シベリア鉄道の北海道延伸だ。宗谷海峡などを通す橋やトンネルの建設に加え、不採算路線の廃止を検討するJR北海道と接続するとなれば周辺路線の再整備も必要になり、多額の費用がかかる。
第二次世界大戦でロシアの軍事輸送の要を担った経緯から、「北海道が占領される」などと安全保障上の懸念を指摘する声も強い。それでも、首脳会談を間近に控えた民放の番組は大いに盛り上がった。「日露の共同経済活動、その目玉の一つはシベリア鉄道の北海道への延伸。日本からすればユーラシア大陸に抜ける大動脈ができることになる」-。結果的に実現しなかったものの、夢のある話だったのは間違いない。