国際貿易投資研究所・畠山理事長に聞く
通商産業省(現経済産業省)の通商産業審議官として1989年以降の日米構造協議やウルグアイ・ラウンドなどの通商交渉に深く携わった国際貿易投資研究所の畠山襄理事長(80)がフジサンケイビジネスアイに対し、トランプ米大統領の通商政策について語った。
トランプ米大統領の狙いは、「本音の政治」の実施といえるだろう。
第二次世界大戦が終わり、世界は夢と希望の展望に踊った。関税貿易一般協定(GATT)と国際通貨基金(IMF)体制を通じた自由貿易体制が確立し、冷戦は終了した。しかし、そこに落とし穴があった。
最近、多くの米国民は見せかけの優等生を演じることに、本音を語れない平和に、そして、強いられた偽善にうんざりしてきた。トランプ大統領勝利の背景には、米国民のそうした意識の変化があったのではないか。米国に限らず、欧州連合(EU)からの離脱を選択した英国の国民投票もこの例に含まれるだろう。
トランプ政権の政策には貿易・金融・経済・人の移動などあらゆる政策に「自由」とは正反対の「規制」が入り込んできている。
過去の米政権は、世界経済発展のため環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)や北米自由貿易協定(NAFTA)など、海外投資を是として規制緩和・自由貿易の方向を目指していた。ところが、トランプ政権はそれらを米国内の雇用が減るとの理由で非ととらえ、規制強化へとかじを切った。