ドル安なら「米国第一」は不発
日米両国は10日の首脳会談の結果、包括的な日米経済協議の開始で合意した。為替問題が最大の焦点になるが、目指すべきは円・ドル相場の安定だ。ドル安は米金融市場を不安定にし、日本の対米投融資を困難にし、「米国第一主義」は不発に終わるだろう。
日米首脳会談を間近に控えたある日の午前3時、トランプ大統領は側近のフリン大統領補佐官に電話して「強いドルと弱いドルと、経済にとってどっちがいいんだ?」と聞いたという(米ニュースサイトの「ハフィントンポスト」10日午前の発信記事から)。真偽は不明だが、大統領の迷いは十分あり得る。
グラフは1985年9月のプラザ合意以来の主要国通貨に対するドルの実効相場と貿易赤字の推移である。87年10月の史上最大規模のニューヨーク株価大暴落(ブラックマンデー)、2008年9月のリーマン・ショック。いずれもドル安の最中だ。債務国米国は海外からの資金流入に依存している。ドル安におびえる投資家は何かのきっかけで、一斉に米金融市場から逃げ出す。
「弱いドル」は米国の金融経済(ウォールストリート)にとってはまずいが、自動車など主要産業界(メインストリート)は歓迎する。「強いドル」はその逆だ。米貿易赤字は一般的なドル相場の強弱とは連動しないが、人民元問題は別格だ。中国当局は人民元安に誘導し、対米輸出を急増させる。一方で、ゴールドマン・サックスなど米金融資本を取り込んで、巨額の対米黒字の一部を米国債購入に充当し、ゴールドマン出身者が要職を占める米政権の不満をかわしてきた。