
安倍首相とトランプ氏【拡大】
普通なら先方からの要求を恐々と受け身で待ち構えるところ、先制攻撃をしかけて(こちらから提案して)、麻生氏を持ち出して有利な枠組みを成立させてしまったのはさすがである。トップ同士で仲良くして、面倒な課題は「上司をおもんばかる下」に調整させ、時間稼ぎをする、という面も多分にあろう。乱戦での安倍政権の強さを示している。
今回はスタートであり、時間軸を含む戦略眼からは、今後の油断は禁物だ。トランプ氏の主戦場であるビジネス交渉では「上げて、落とす」のは常套(じようとう)手段であり、安倍総理「接待」会場の「マール・ア・ラーゴ」を、脅しあげて相場の約4分の1で買いたたいたとも言われる同氏が今後、タフ・ネゴシエーターぶりを見せてくる可能性も捨てきれない。ただ、まずは、今回の安倍総理・政権の対応を手放しで評価したいと思う。
最後に、紙幅の関係で詳述はできないが、反射的効果としてロシアのプーチン氏への影響が大きい点も指摘しておきたい。米露の橋渡し役としての日本という可能性を大きく示したことは間違いない。
そもそも今回のトランプ氏の異例の厚遇は、首脳外交経験の豊富な安倍総理に、プーチン氏をはじめ、各国首脳の人柄やその他の情報を聞くためだった面もあるはずだが、長期安定政権は、特に外交で大きな武器になることを改めて見せつけられた。残念ながら、国内改革では踏み込み不足が目立つが、わが国の国益のため、この安定政権が続くことを望みたい、と改めて感じた次第である。
◇
【プロフィル】朝比奈一郎
あさひな・いちろう 青山社中筆頭代表・CEO。東大法卒。ハーバード大学行政大学院修了。1997年通商産業省(現経済産業省)。プロジェクトK(新しい霞ヶ関を創る若手の会)代表として霞が関改革を提言。経産省退職後、2010年に青山社中を設立し、若手リーダーの育成や国・地域の政策作りに従事。中央大学客員教授。43歳。