別に、売るマンションがなかったわけではない。手元に売るべき物件はあるが、当初想定していた価格が高すぎてマーケットに出せなかったのだ。「市況が回復するまで」と物件を手元に抱え込んでいるうちに、在庫が膨らんでしまったのだ。
ただ、デベロッパー各社が様子見を続けていられるのも年明けまで。2017年3月期で特別損失を計上、ケリをつけてしまわないと、翌期に持ち越せばさらに損失が膨らむリスクをはらむ。下手をすれば落とすに落とせなくなってしまう。だから建築費をゼネコンに割り引いてもらったうえで、損失を計上して販売価格を引き下げ、処分する計画なのだ。
建築費の高騰の最大の原因は人手不足
こうした動きは以前にもあった。2008年のリーマン・ショックの後だ。当時もマンション価格は高騰、「新・価格」とか「新・新価格」などといった言葉が飛び交うくらいにうなぎ登りに上がっていった。そこでバブル崩壊。マンション市況は一気に冷え込んだ。
この時はアーバンコーポレイション、モリモトなどカタカナ不動産会社が一気に割を食った。三井不動産や住友不動産など財閥系の大手不動産はオフィスビルの利益で、マンション事業の損を処理し事なきを得たが、マンション一本足打法のカタカナ不動産会社は資金がたちまちショートし、次々と倒産に追い込まれていってしまった。