大型事業で各地が沸き立つ現状に、地域経済の先行きを危ぶむ声も上がる。建設関係者は「10年先を予定していた工事も前倒しで消化している」と口をそろえる。国土交通省幹部は「防潮堤の整備が終われば、建設業者の仕事は減るだろう」と予測する。
被災自治体の危機感が特に強いのは災害公営住宅だ。津波で自宅を失った被災者があまりにも多く、岩手、宮城、福島3県で計約3万戸を整備。いずれ多額の維持管理費が発生する。全世帯の8分の1に相当する約700世帯分を建てる大槌町は「自力で管理できるだろうか」と頭を抱える。
公営住宅空室多発も
単身の高齢入居者が多く、今後は住人が亡くなるなどして空室が各地で多発する見通し。都市部では、家賃が安い公営住宅に空室があれば入居希望者が殺到するが、被災地は人口流出が進む。空室が埋まらず、維持管理費の原資の家賃収入が確保できない恐れがある。
さらには、大量の建物の完成時期がほぼ同じため、大規模改修も同時期に押し寄せる。阪神大震災から約5年後に公営住宅の統廃合計画をまとめた神戸市は「長期的な視点での管理が不可欠」と警鐘を鳴らす。国の手厚い財政支援は20年度までの予定。一方、道路や防潮堤なども含めた維持管理費は将来にわたって必要となる。「いきなり支援を打ち切り、震災前に戻すとは言えない」と総務省幹部。21年度以降の国の支援は、19年度ごろ議論される見通しだ。