
判決を前に法廷に入廷するアホック氏=5月9日、首都ジャカルタ(AP)【拡大】
◆少数派は不利
インドネシアは、国際人権規約に加入しており、宗教の自由が保障されているとはいえ、宗教冒涜罪が実質適用されるのは5つの宗教・教派(イスラム、プロテスタント、カトリック、ヒンドゥー、仏教)だけであり、イスラム教の内部対立によって迫害されているアフマディア教団やシーア派といった宗教上のマイノリティー(少数派)を守る仕組みにはなっていないという。
このため、宗教上のマイノリティーグループが5つの宗教・教派のどれかを冒涜した場合は罪にあたるが、例えばイスラム教徒がアフマディア教団を冒涜しても罪に問われないという欠陥があるという。
アホック氏のケースも、もし、イスラム教徒によるキリスト教徒への冒涜発言であれば、同じ判決にはならなかったのではないかといわれる。多くの人権活動家は、65年に宗教冒涜罪を規定した刑法156a条は、政治的に利用される可能性があることや、宗教マイノリティーを守れないという欠陥を抱えたままであることを理由に廃止を訴えている。
日本人のわれわれには理解しがたい宗教アイデンティティーをめぐるさまざまな政治的駆け引きや政治利用は今、世界中で起きている。
「多様性の中の統一」を掲げるインドネシアが世界のお手本となるべく、アホック氏のケースから学び改善してほしい。そして、政治を良くしたいのであれば、日本も含め、宗教アイデンティティーではなく、政治家としての質で選べるようにならなければと思う。(笹川平和財団 堀場明子)
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