
日米経済対話で発言する麻生財務相=16日、ワシントン(代表撮影・共同)【拡大】
牛肉制限折り合わず
しかし、日本が8月に発動した牛肉の緊急輸入制限(セーフガード)については、協議されたが制度見直しで折り合わず、合意文書への記載は見送り。貿易分野については、麻生氏が改めて米国が離脱したTPPの重要性を説いたもようだが、米側が貿易赤字に対する懸念を示し、FTA交渉にも言及したことで、日米間の溝も浮き彫りとなった。
トランプ氏が11月の訪日時にどんな発言をするか予測するのは難しいが、日本側は、経済官庁幹部が「少なくとも今、FTA交渉を始める考えはない」と警戒する。懸念するのは、11月10日からのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて大筋合意を目指すTPP交渉への影響だ。
参加11カ国は離脱した米国の復帰につなげるため、高水準の貿易自由化を維持する方向で協議している。ただ、経済規模が大きい日米が別途FTA交渉を進めれば米国が戻ってくる期待は急速にしぼむ。11カ国の協議は前提が崩れ、妥結が難しくなる可能性がある。
日本政府内では、これまで米国は「日本とのFTAを進める余裕がない」(通商筋)とみる声が強かった。最大の貿易赤字国である中国との交渉に加え、北米自由貿易協定(NAFTA)や米韓FTAの再交渉に注力しているためだ。
来年11月の中間選挙に向けて結果を出したいトランプ政権にとって、長期間の交渉が必要になる日本とのFTA交渉をゼロから始めるより、既存協定の見直しで得点を稼ぐほうが現実的だとの読みもあった。