【高論卓説】日本農業が生んだ世界の“救世主” サツマイモ新品種「すいおう」 (2/2ページ)

※写真はイメージです(Getty Images)
※写真はイメージです(Getty Images)【拡大】

 山川博士が九州沖縄農業開発センターと7年間の共同研究で開発したサツマイモの新品種が「すいおう」だ。「すいおう」はイモだけでなく葉も茎も全ての部分を食することができる画期的なサツマイモである。その上、イモを1回収穫する間に生育の早い葉と茎は3回収穫することができる。

 私たちが普段食するイモにはカロリーの元となるデンプン質、葉や茎の部分にはビタミン、ミネラル、ポリフェノールなどの栄養素が多く含まれている。「すいおう」の葉や茎に含まれる栄養価はカルシウムでホウレンソウの2.8倍、ビタミンB1でキャベツの2倍、ビタミンB2でセロリの5.6倍だ。

 つまり、「すいおう」を食べれば、カロリーもビタミンもミネラルも摂取することができる。これこそまさに飢餓や栄養不足に悩む国や地域が待ちに待った天の恵みであろう。「すいおう」は安価で大抵の土壌でも生育が可能なので雨の少ない地域でも比較的簡単に栽培ができる大きな利点がある。

 「すいおう」は国内でもまだあまり知られておらず、現在官民で構成される「すいおう研究会」が国内での普及を図っている。が、山川博士にはその先の世界を見据えた大きな夢と計画がある。近い将来、国際協力機構(JICA)の若者が大量の「すいおう」の苗を担いで世界の貧困地帯に飛び出す。やがてその地域には「すいおう」の緑の葉が広がり、飢えて痩せ細った子供たちから笑顔が戻る。日本で生まれた野菜が世界の飢餓を救う。すごいぞ、日本の農業。ガンバレ、イモ博士。それにしても食品破棄は自分たちで何とかしないといけない問題だ。

【プロフィル】平松庚三

 ひらまつ・こうぞう 実業家。アメリカン大学卒。ソニーを経て、アメリカン・エキスプレス副社長、AOLジャパン社長、弥生社長、ライブドア社長などを歴任。2008年から小僧com社長(現職)。他にも各種企業の社外取締役など。71歳。北海道出身。