タイ、ブランド化で農家支援 反軍政勢力を切り崩し

タイ・バンコクのスーパーで、GI認定されたコーヒーを手にする店員=2017年11月(共同)
タイ・バンコクのスーパーで、GI認定されたコーヒーを手にする店員=2017年11月(共同)【拡大】

 タイの軍事政権が、産地名を地域ブランドとして独占的に利用できるようになる「地理的表示(GI)制度」を活用し、地方農業の活性化を目指している。軍政と対立するタクシン元首相派の支持者は地方農村の貧困層に多く、農民の生活を底上げして反軍政勢力の切り崩しにつなげたいとの思惑がある。

 GIは農産物や食品などに付く地名をブランドとして保護する仕組み。品質や社会的評価が産地の伝統的製法、現地の風土に基づいている場合、知的財産として登録される制度で、フランスの「シャンパン」やイタリアの「パルマハム」が有名だ。日本は2015年に導入し、「夕張メロン」や「神戸ビーフ」も登録されている。

 タイ商務省によると、タイは03年に制度を導入。香りが良く、タイで最高のコメの一つとされる東北部トゥンクラロンハイ地域の「トゥンクラロンハイ香り米」や、東部プラチンブリ県の「ドリアン・プラチン」などの果物、絹製品など約100品目が登録されている。

 昨年3月には日本とGI分野での協力を始め、百貨店などでGI認定された農産品フェアも開いた。麻薬地帯がコーヒー農園になった北部チェンライ県の山間部にあるドイトゥンで作られた「ドイトゥン・コーヒー」は日本でも購入が可能だ。国外で認定されたタイの農産品はコーヒーなど10品目以上になる。

 登録には厳しい基準を満たす必要があり、認定されることで「農産物の品質向上につながる」(タイ商務省の担当者)。国が高品質のお墨付きを与えることで、通常よりも高い値段で販売でき、国外に売り込む際にも有利になるという。

 タイでは01年に首相になったタクシン氏が、貧困層の支援に向けてさまざまな政策を実施した。タクシン派と、既得権益を守ろうとする軍や財閥などの反タクシン派が激しく対立し、国を二分する状態が今も続いている。GIが軍政の狙い通りに機能すれば、国の補助金に依存する農業から、自力で稼ぐ農業への転換が進むとの見方がある。タイの現地メディアによると、商務省知的財産局長は「全ての県から少なくとも一つのGI品目が登録されるようにしたい」と意気込む。

 外交関係者は「国のカネを投入せずに、いかに農村の底上げをするかを、軍政は課題としている。GI制度でタクシン派弱体化を図ろうとしている」と指摘した。(バンコク 共同)

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【用語解説】タイの政治対立

 01~06年に首相を務めたタクシン氏支持の地方農民や貧困層と、軍や官僚などを軸とした反タクシン派が対立。タクシン氏は医療制度充実、行政改革や軍予算の削減を進めた。軍は06年、クーデターで政権を転覆。タクシン氏の妹インラック氏が11年に首相に就いたが、軍は14年に再びクーデターで政権を奪った。(バンコク 共同)