金融庁、仮想通貨での資金調達監視 差し止め含め法改正も視野


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  • 仮想通貨取引への新たな対応を迫られている金融庁

 金融庁が、企業が独自の仮想通貨を発行して資金調達する「新規仮想通貨公開(ICO)」の監視強化に乗り出したことが26日、分かった。ICOは日本でも事業資金を迅速に調達する手段として利用され始めているが、海外では集めた資金を持ち逃げするケースも出ている。ICOによるトラブルを防ぐため、関連する法令の改正も視野に検討を進める考えだ。

 ICOは、企業が「トークン」という独自の仮想通貨を発行し、投資家に販売して資金を集める。トークン購入に使えるのはビットコインなど主要な仮想通貨でICO実施者が指定する。

 ホームページなどに簡単な計画書を開示するだけで投資家を勧誘できるため、新興企業などがお金を集めやすい。ただ、海外ではお金を集めたまま事業が計画倒れになるなど詐欺に近い案件も明らかになった。

 日本には、明確にICOの手続きなどを定めた法律はない。現状では改正資金決済法や金融商品取引法などに照らし合わせて違法性をチェックするしかなく、不十分だ。法改正を求める声が上がっており、金融庁は不適切なICOの差し止めも含め検討する方針だ。

 昨年10月、金融庁はICOについて「約束されていた商品やサービスが提供されないリスクがある」とした注意喚起の文書を公表。2月13日には、日本で仮想通貨交換業者の登録をせず、ICOの営業・勧誘をしているとして、マカオを拠点とするブロックチェーンラボラトリーに対し、改正資金決済法に基づく警告を出した。

【用語解説】ICO

 Initial Coin Offering(イニシャル・コイン・オファリング)の略。企業が「トークン」と呼ぶ独自の仮想通貨を発行し、投資家はその対価として、ビットコインなど流通量の多い仮想通貨で出資する。トークンは発行した企業の製品・サービスの購入に使うことができ、企業は集めた仮想通貨を交換業者を通じて円や米ドルに替えられる。