茂木氏の考えは交渉官会合に伝えられた。議長役の梅本氏は翌日発表する読み上げ原稿2枚を取り出し配布。1枚目は11カ国、2枚目は10カ国で合意する案だった。メキシコの交渉官が口を開いた。「2枚目でいくこともやむを得ない」。カナダと共同歩調を取るとみられていたメキシコの“変心”。カナダの交渉官は狼狽(ろうばい)を隠しきれなかった。翌23日午前8時。カナダ側は梅本氏に求めて急遽(きゅうきょ)会談し伝えた。「文化例外はサイドレターでお願いしたい」。カナダが折れた瞬間だった。この日の交渉官会合はカナダの譲歩で決着。くしくもトランプ米大統領が離脱の大統領令に署名した昨年1月23日から1年目のことだった。
メキシコと共同歩調
カナダが混乱の“元凶”となったのは、昨年11月、ベトナム・ダナンで開かれたTPP11カ国の閣僚会合で、シャンパーニュ国際貿易相が突然、文化例外を持ち出したことがきっかけだ。
閣僚会合では大筋合意に達し文化例外は継続協議となったが、首脳会合の会場にカナダのトルドー首相は現れなかった。首脳間の合意ができない「国際会議史上、前代未聞の緊急事態」(交渉筋)となった。
カナダの「遅延戦略」を許せばまとまらない-。帰国後、茂木氏がカナダ説得の切り札として目を付けたのは、カナダと同じく米国とNAFTA再交渉に臨んでいるメキシコだった。