
国家安全保障会議(NSC)常任委員会に臨む、韓国の文在寅大統領(中央)と政府高官ら=25日、ソウル(韓国大統領府提供・共同)【拡大】
【ソウル=名村隆寛】トランプ米大統領が米朝首脳会談の中止を北朝鮮に通告したことを受け、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は25日未明、国家安全保障会議を緊急招集し「当惑しており非常に遺憾」と表明。会談実現に向け仲介役を自任してきた文政権は困惑している。
会議で文氏は「問題解決に努力してきた当事者らの誠意は変わっていない」と強調する一方、「今の意思疎通方法での問題解決は難しい。首脳間の直接的、緊密な対話による解決を期待する」と述べ、仲介役の限界を認めた。
文氏は2月の平昌五輪への北朝鮮の参加を機に仲介に努めた。だが、米国は信頼不足を理由に会談中止を決定。米朝間で双方の考えを伝えることに奔走した文政権だが、北朝鮮の意思を自分なりに解釈し米国側に伝え、結果的に米国の北朝鮮への信頼がうせたことも考えられる。韓国は結局、米朝の板挟みになった。
韓国紙、朝鮮日報は25日付社説で「トランプ大統領は金正恩(キム・ジョンウン朝鮮労働党委員長)との今後の交渉の可能性に触れており、チャンスが完全になくなったわけではない」と指摘。「文大統領が直通電話で金正恩に再度、核放棄の決断を促す必要もある」と訴えた。
現実を認めつつも、文氏は北朝鮮同様、米朝首脳会談をあきらめ切れないようだ。ただ、追い込まれた金正恩氏が文氏に頼ってくる可能性も十分にある。北朝鮮にとって、文氏に対する期待度や利用価値はなくなったわけではない。