市場は「離脱」連想、ユーロ売り拍車 イタリアで高まる再選挙観測

日経平均株価の推移
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 30日の東京株式市場は、イタリア政局の混迷で欧米株が下落、円高が進行し、投資家心理が冷え込み大幅安となった。イタリアでは大統領とポピュリズム(大衆迎合主義)政党の対立で再選挙の観測が高まっており、影響は長引く可能性がある。米中貿易摩擦などリスク要因が山積する中、当面は先行きを見極める動きが続きそうだ。

 イタリアでは3月の総選挙で、欧州連合(EU)に批判的なポピュリズム政党「五つ星運動」が躍進。EUと協調路線をとるマッタレッラ大統領と連立政権や組閣をめぐって対立し、事態打開を図るため7月下旬にも再選挙を行う動きが強まっている。再選挙は五つ星運動などが勢力を伸ばすとの見方が多い。為替相場はイタリアのユーロ離脱を懸念したユーロ売りが加速し、安全資産の円を買う動きが強まった。

 2016年6月にイギリスが国民投票でEU離脱(ブレグジット)を可決した際も、円が急騰して日経平均は大幅安となった。ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは「イタリアの再選挙次第で、ブレグジットの再来になる恐れもある。欧州でビジネスをする日本企業にも影響が大きい」と話す。

 一方で、ユーロ圏の1~3月期の実質域内総生産(GDP)は前期比0.4%増(速報値)と堅調だ。イタリア政局の混乱が、「欧州全体の景気や金融システムに影響を及ぼす可能性は低い」(三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジスト)との見方もある。

 ただ、米国は6月15日に追加関税を課す中国製品のリストを決定。米国の利上げに伴う新興国通貨安などリスク要因は積み上がっており、「先行きの不透明感は払拭しにくく、株価は上値が重い展開が続く」(みずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリスト)。(会田聡)