買い物弱者、10年で2割増 15年農水省推計、65歳以上の4人に1人

 農林水産省は11日までに、スーパーやコンビニが自宅から遠い上に車を使えず、食品購入に苦労する65歳以上の人が、2015年時点で824万6000人に上るとの全国推計を発表した。この「買い物弱者」は高齢化を映して10年前に比べ21.6%増え、三大都市圏の伸びが目立った。65歳以上の人口に占める割合は24.6%へとやや低下したが、依然として4人に1人が不便を強いられているとの結果となった。

 同省は都市部で急増する高齢者は、自家用車を持ちにくいことが反映したと分析。地方を中心に郊外で大型商業施設が増え、歩いて行ける店が減ったとみており、支援が必要だと考えている。

 推計によると、買い物弱者の数は05年比で東京、大阪、名古屋の三大都市圏は44.1%増、地方圏は7.4%増。都道府県別では神奈川が最大の68.7%増となった。

 65歳以上の人口比は最も高い長崎の34.6%をはじめ、青森、秋田、愛媛、鹿児島が30%を上回った。最も低いのは群馬の19.1%だった。

 推計対象は、最寄りの食品スーパーやコンビニなどが自宅から直線距離で500メートル以上離れ、車を利用できない人。同じ条件で75歳以上に絞ると全国で535万5000人が当てはまり、75歳以上の人口の33.2%を占めた。山口などで40%を突破。東京は23.6%にとどまったが、買い物弱者に当たる人数は05年より82.8%も増えた。

 農水省の農林水産政策研究所が15年の国勢調査などを基に算出し、都道府県や市町村ごとに買い物弱者の割合を色分けした「食料品アクセスマップ」もホームページで公開した。研究所は国や自治体による支援のほか企業の出店戦略の立案、移動スーパーのルート設定などに役立ててもらいたい考えだ。

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【用語解説】買い物弱者

 近所に食料品店やスーパーがなかったり、車を運転できずに外出が難しかったりして日常の買い物に困る人。過疎化の影響で商店が減った山間部に多いが、大型商業施設の郊外化に伴って、都市圏でも増加している。買い物の不便さから外出の機会が減り、加工食品への依存が高まることで、健康に悪影響が及ぶことも懸念されている。