中国の影響力にらみ 豪とNZ、太平洋諸国へ援助アピール

中国の援助でできたパプアニューギニア・ポートモレスビーの国際会議場(共同)
中国の援助でできたパプアニューギニア・ポートモレスビーの国際会議場(共同)【拡大】

 オーストラリアとニュージーランドが、太平洋の島嶼(とうしょ)国への巨額援助を相次いでアピールしている。両国は援助国の中心的存在として伝統的に島嶼国と関係が深いが、太平洋地域では近年、中国が戦略拠点の確保を狙って影響力を強化しており、両国は存在感を取り戻そうと躍起だ。

 ◆戦略拠点

 オーストラリアのターンブル首相は4月、パプアニューギニアとソロモン諸島で高速インターネット通信を可能とする海底ケーブルをオーストラリアとの間に敷設する方針を明らかにした。

 ソロモン諸島と最大都市シドニーを結ぶケーブルは、ソロモン諸島側の意向で中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)が請け負うことになっていた。だが、オーストラリアが中国への機密情報の漏洩(ろうえい)に懸念を表明、事業が中断した経緯があり、これで中国を排除した形だ。約2億豪ドル(約165億円)と見込まれる費用の3分の2程度をオーストラリアが負担する。

 オーストラリアは2018年度(18年7月~19年6月)予算案で、国外援助に例年規模の42億豪ドルを盛り込み、このうち太平洋諸国向けは前年度の11億豪ドルから13億豪ドルに増やした。

 ニュージーランドのピーターズ副首相兼外相も5月、今後4年間で7億1400万ニュージーランドドル(約545億円)を国外援助に投じ、大半を太平洋諸国に割り当てると発表。ピーターズ氏は中国を念頭に太平洋地域が「競争の激しい戦略拠点となった。われわれがそこにいなければ他の勢力が出てくるだろう」と危機感をにじませた。

 ◆“援助漬け”

 オーストラリアのシンクタンク、ローウィー研究所によると、06~16年に中国が太平洋地域で実施した援助額は、無利子融資を含めて少なくとも18億ドル(約1986億円)に上る。

 中国はバヌアツで軍事拠点の建設を検討していると報じられたほか、ソロモン諸島など台湾が外交関係を持つ国へもインフラ整備などで援助攻勢を強めている。

 米ハーバード大の研究者らは最近、中国がバヌアツ、トンガなどの太平洋諸国を含む16カ国で、返済の見通しが立たない不透明な融資を行っているとの報告書を米国務省に提出した。

 バヌアツが抱える債務の約5割が中国の融資によるもので、パプアでは中国からの債務が過去5年間で約13倍に膨れ上がり、“援助漬け”にして影響力を高める中国の戦略が透ける。(シドニー 共同)