ベトナム、偽商品に根強い“需要” 安価で本物並みの品質、中国から流入

ベトナム・ハノイのドンスアン市場で販売されている偽商品(共同)
ベトナム・ハノイのドンスアン市場で販売されている偽商品(共同)【拡大】

 生産地やブランドをかたった「偽商品」がベトナムで横行している。隣国の中国から流入しているとみられ、当局が取り締まりの強化に乗り出した。ただ、安価で本物に近い品質を持つものもある偽商品は根強い“需要”に支えられており、流入は簡単には止まりそうにない。

 首都ハノイの中心部にあるドンスアン市場。薄暗い建物内の電気製品売り場に、ドライヤーやラジオなど各種家電がぎっしりと並ぶ。英語で「純正品」というシールが貼られたiPhone(アイフォーン)用イヤホンは9万ドン(約430円)。市内の純正品販売価格のおよそ9分の1だ。

 「中国から来た偽物よ」と隣の売り場の店員がささやく。別の店員も「扱っているのはほとんど中国製の偽物。本物なんて高くて仕入れられない」と明かす。

 日本の経済産業省によると、ベトナムは東南アジアの中でもタイに次いで模倣品被害が多いという。ハノイの小売店で売り上げの45%は偽商品が占めるという調査結果もある。日本の家電メーカーの偽商品も広く出回り、品質は「(本物に近い)スーパーレベルから初級レベルまで」(日本メーカー社員)さまざまだ。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、偽商品を取り扱う中国の業者と東南アジア各国の業者は、インターネットや中国国内で開かれる展示会などを通じて商談する。

 偽商品の多くは、中国南部の広西チワン族自治区や雲南省から陸路で持ち込まれるか、船で北部のハイフォンや南部のホーチミンなどの港に運ばれる。国境では周辺住民の往来が頻繁で、手荷物として検査を受けずに持ち込むことは容易だ。交易ポイントは数百カ所あるとされ、全て取り締まることは難しい。

 ベトナムでも都市部の中間層を中心に安全性への意識が高まり、偽商品を避ける傾向が強まっている。ただ、ベトナム政府当局者は「需要のあるところに供給がある」と述べ、安ければ品質を問わない消費者が多いことが偽商品の流入を支えていると指摘した。(ハノイ 共同)