「自由貿易体制への挑戦」 政府の通商白書が米中摩擦に警鐘

 政府は10日、平成30年版の通商白書を閣議に報告した。米国による鉄鋼やアルミニウムに高関税を課す輸入制限に懸念を示す一方、中国の鉄鋼や半導体の過剰生産問題も指摘した。その上で米中の通商摩擦を念頭に「世界貿易機関(WTO)ルールにのっとらない一方的措置の応酬は、どの国の利益にもならない」と強調。世界経済が「WTOに基づく自由貿易体制に対する挑戦」に直面していると警鐘を鳴らした。

 トランプ米政権は3月、鉄鋼輸入制限を発動したが、白書は「日本からの輸入は米国の安全保障に悪影響を与えることなく、むしろ米国の産業や雇用に多大な貢献をしている」と指摘した。一方、トランプ米政権が検討している自動車の輸入制限については、「白書を作成する時間的な問題」(経済産業省幹部)から記述していない。

 白書は米国が鉄鋼輸入制限を発動した要因の一つである中国の鉄鋼過剰生産問題についても分析。中国の鉄鋼会社の利益率が生産拡大で低下したことを受け、政府が補助金を増やしたとした。また中国は半導体産業を国策で育成しており、半導体も過剰生産で市場が混乱する恐れがあると警告した。