
米中西部イリノイ州で、トラックの荷台に積まれた大豆。米中の貿易摩擦により、大豆が中国人の食に影響を及ぼすおそれは高い(塩原永久撮影)【拡大】
習政権は対米報復第1弾の340億ドルですら品目探しに苦心した形跡がある。大豆や自動車は金額規模も大きいが、他には豚の内臓や鶏の足数億本までが含まれる。いずれも米国内ではほとんど消費者に見向きもされずに、廃棄されていたのだが、巨大な中国需要に合わせて輸出されるようになった。習政権は、くずに値がついて、ほくほく顔だった米国の養鶏農家に打撃を与え、養鶏地帯を選挙地盤とするトランプ支持の米共和党議員への政治的メッセージになると踏んで、報復リストに加えたのだろうが、中国人の胃袋も直撃される。
中国人の食にもっと広範な影響が及びそうなのは、もちろん大豆である。米国の対中大豆輸出量は昨年3300万トンで、米国産は中国の大豆総需要のうち、約3割を占める。輸入大豆は搾って食用油になり、粕(かす)が豚や鶏の餌になる。米国の大豆産地が鶏と同様、中西部のトランプ支持基盤とはいえ、その輸入コスト上昇や量の不足は、中国人全体の胃袋と家計に影響する。
トランプ弾の規模が大きくなればなるほど、中国のマクロ経済が受ける打撃は計り知れなくなる。というのは、中国共産党が統括する金融経済モデルは西側先進国と違って、中央銀行である人民銀行が流入外貨、すなわちドルを買い上げては人民元資金を発行し、国有商業銀行、国有企業、地方政府へと流し込む。人民銀行の総資産に占める外貨資産は66%に上る。