「セイロン珈琲」復活挑む 邦人男性、豆生産やカフェ経営

スリランカ中部キャンディで、同国産コーヒー専門店を経営する吉盛真一郎さん(奥)と女性店員=3月(共同)
スリランカ中部キャンディで、同国産コーヒー専門店を経営する吉盛真一郎さん(奥)と女性店員=3月(共同)【拡大】

 紅茶の国スリランカで、約150年前まで中心産業だったコーヒーを復活させようと邦人男性が奮闘している。豆生産に加えカフェを経営、“幻のセイロン(スリランカの旧名)珈琲”として売り出す。コーヒーの葉から抽出した「お茶」の販売も開始し、農家の所得向上にも取り組んでいる。

 「本当にスリランカ産ですか?」。古都キャンディの世界遺産・仏歯寺近くのカフェ「ナチュラル・コーヒー」で、東南アジアからの観光客らが驚きの声を上げた。店主の吉盛真一郎さんが手掛けるコーヒーは1杯400スリランカルピー(約280円)程度と現地紅茶の約20倍の価格だが、すっきりした上品な味で、客足が絶えない。

 スリランカは1860年代、主要輸出品のコーヒーが豆の病気で壊滅し紅茶輸出に転換した。その後、山間地などで自生していたコーヒー豆の栽培を国際協力機構(JICA)が2007年から数年間支援。ゼネコン駐在員だった吉盛さんが噂を聞き「生産から販売まで一貫するフェアトレード(公正な貿易)をしたい」と、復興を軌道に乗せる活動を始めた。

 飲食業は未経験だったが、13年に同国で珍しいコーヒー専門店を開業した。中部の農家に委託し、ふぞろいだった豆の質を整え、農家を店に招き「高級品」として扱われる様子を見せて士気を高めた。生産量はかつての5倍になり、高級ホテル約40軒に豆を提供している。事業に関わる約500人の大半は女性で、吉盛さんは「女性の社会進出支援にもなる」と話す。

 最近、捨てられていたコーヒーの葉を使うお茶「テ・カフェ」を開発した。「コーヒー豆の収穫は10~12月ごろだが、年中採れる葉を活用すれば閑散期の農家の収入になる」と吉盛さん。日本進出も夢見ている。(キャンディ 共同)