【論風】グローバルデータサプライチェーン 官民が協力して確立を (2/3ページ)

 一方、自国のデータは自国に便益をもたらすべきものであるから、囲い込みたいとする考え方も、故なきものではない。自国の資源であるデータが国外でのみ収益化されるということは看過できないであろう。筆者らは最近、日本企業を対象にデータ利活用に関する質問票調査を行ったが、そこではデータの提供者に対する便益が確保されている利活用モデルでなければ、データ利活用自身のパフォーマンスが向上しないという結果が得られている。

 データ提供者や提供地域に対する便益が確保できないようでは、そもそもサステナビリティーがないのだという結論である。そういう意味ではこの問題を解決するインセンティブは産業界にあり、企業自身がデータ提供地域の便益を図っていくことが重要であるということを示している。このような事実を踏まえ、各国政府はグローバルなデータ利活用の規範は産業界の取り組みに委ね、規制は最小限にするという考え方が妥当であると思われる。

 世界初のガイドライン

 そうはいっても、データ提供側と活用側との間の取引に関しては、データの所有権が法律で規定されているわけではないため「データは誰のもの」などの出口のない議論に陥りやすい。このようなことから国内外問わず、データ利活用契約はなかなか合意に至らないことも少なくない。この問題に対して経産省は、多くの専門家の集中討議によって「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」をまとめ、6月に発表した。データや人工知能(AI)利活用に関する契約で定めておくべき事項を参考として示したものだ。

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